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社長ブログ

Tokyo, JP, 09 Feb, 2018

寒い日が続きますが、みなさまお元気でお過ごしでしょうか?

サステナブルな価値と製品の売り上げは、どのように両立させていけばよいのでしょうか。化学業界の皆様からもよく訊ねられる切実な問題です。今日はひとつの例を引き合いに、DSMの実情をお答えしましょう。

Eco+ & People+

DSMでは”ECO+”(エコプラス)に加えて、”People+” (ピープルプラス)という基準を設けています。これは製品の原材料段階、製造段階、使用段階、廃棄またはリサイクル段階で、すべての人に対するやさしさを重んじるもの。自社製品のライフサイクルに関与する人に、危険を及ぼすようなものがあってはならないという考え方です。ECO+が、通常のライフサイクルアセスメントを通して、環境インパクトを測定しながらどれだけ低いか評価するのに対して、People+はライフサイクルを通して関与する人へのインパクトを評価します。

もちろんこのような基準は事業部にも負担がかかります。その一方で「あなたの製品は、使用される場所でのダイバーシティ&インクルージョンにどれだけ貢献していますか?」などという質問がいきなり飛んでくる時代にもなっています。

「えっ? そんなこと考えたこともないよ」

「でもこれで一定の点数が取れないと、事業部が取り潰される可能性だってあるよ」

「しようがないな。やるしかないか」

そんな具合で、基準は採用されていくのです。

このPeople+の例は、DSMが開発したスーパー繊維にも見られます。船を港に係留しておく大きな鉄製のチェーンをご存じでしょうか? 港湾の仕事はあのような道具を使う力仕事が中心で、かつては屈強な男性だけの職場でした。でもDSMの超強力繊維ダイニーマ®(Dyneema®)製のロープなら、片手で持ち上げられるような軽さで巨大チェーンと同等の強度が得られます。このような技術革新が港湾業者の作業負担を緩和し、港湾で働く女性も増やしてダイバーシティの推進にもつながっています。

このダイニーマ®は20年以上前から造ってきた製品ですが、DSMの事業部がこのようなことを考え、成果を内外に発信することに意義があります。港湾業者のダイバーシティにつなげてストーリー化することで製品に対する見方を変え、社内外の意識をサスティナビリティに向かわせ、さらに次世代の開発に向けた目標にも繋がってくるからです。成果は会計監査事務所に監査してもらいながら、客観的な数値で達成度を認識できるようにしています。

売上目標とのジレンマを乗り越える

このような話をすると、とても正しい疑念をぶつけてくださる方がいます。

「確かにストーリーとしては美しいけれど、実際そんなに簡単なの? 港湾業者のダイバーシティに貢献するからといって、お客さんが高い素材にお金を払うの? 売上目標とサステナビリティ目標のバランスはどうやってとるの?」

もちろんDSMでも、経営会議では売上目標をめぐる現実的な事情が議論されます。仮に「売上目標を達成しなければボーナスはなし」と決めていて、約束通りに達成できなかった場合は確かにそうなります。しかし、幹部は現実を受け入れつつも、その一方で企業が生み出す技術や仕組みこそがサステナビリティを推進する原動力であることを自覚し、ストーリーが従業員のやる気や技術革新を引き出している点にも着目しなければなりません。特に若い人はこのようなストーリーにこそ魅力や働きがいを感じてくれる傾向があり、企業がみずからストーリーを発掘する能力も必要になってきます。ストーリーには社員の意識に方向性を与え、エンゲージメントを高める効果があるからです。

営業上のパフォーマンスとサステナビリティの目標は、いつでもせめぎ合っています。逆にいえば、このようなせめぎ合いがあるからこそ日々の難しい判断に迫られ、それが経営のトレーニングにもなるのだと私は考えています。

社会的貢献と一体化した事業を、どのようにして売上につなげていくのか。この問題から決して逃げず、あえて自分から直面するように仕向けることで、企業も人間も大きく成長していけるのではないでしょうか。

Twitter: @yuji_nakahara