自動車業界が電気自動車へと移行するのに伴い、自動車業界とエレクトロニクス業界の交わりがますます加速しています。バッテリーの航続距離が長くなり、それに伴って完全な電気自動車に対する消費者の関心も高まっています。唯一のエネルギー源としてバッテリーを搭載する自動車の販売は、バッテリーが1キロワット時あたり150~200米ドルとなり、内燃機関のコストと同等になる時点を転換点として、大きく伸びることとなるでしょう。その後は、自動車メーカーは電気自動車への取り組み、投資を強化することになり、内燃機関については、今後20~30年で新車への搭載はなくなっていくと予想されています。
バッテリーを動力とする自動車では、出力とエネルギー密度がより高い最新のリチウムイオンバッテリー(LiB)に注目が集まっています。LiBは、スマートフォンからドライブトレーンにいたるまで、すべてのエレクトロニクス用途に対応し、価格は過去10年間で10分の1に低下しました。2018年時点の価格を半減するだけで、内燃機関のコストと同等になるところまできています。
LiBセルはバッテリーの基本構成要素です。セルには電極、セパレーター、電解液が含まれています。セルはハウジング内で積み重ねられ、ヒューズによって保護されているバスバーによって相互接続されています。電解液は可燃性が高いため、LiBそしてLiBの製造に使用される素材は、火災や爆発につながるショートや漏出を防止するため、非常に高度な安全基準を満たさなくてはなりません。
LiBの安全を向上させる方法の1つは、電解液にスクシノニトリル(SN)を添加することです。SNは、LiBの比重、充放電効率、熱安定性、サイクリング性能のほか、バッテリーの総合安全性と耐用期間を向上します。LiBの電解液にSNを添加する場合、その用途が自動車用バッテリー、ノートパソコン、スマートフォン、屋外機器であるかにかかわらず、純粋な製品を使用することが不可欠です。もう一つの重要な特長は、セルの接触点での電解液の漏出を防止する角型セルのシーリングです。この用途は、プラスチックと金属間の強力な接合、および高度の耐薬品性を発揮する素材を必要とします。
効果的なLiBにとって重要であるのは機械的安定性です。バッテリーは、ヒューズによって保護された複数の相互接続されたセルで構成されているため、全体のシステムにおいてセルが移動することはありません。セルが移動した場合、接触抵抗が変化し、ヒューズに電気的ストレスが加わります。その場合、セルやモジュール全体の不具合につながる可能性があります。充電および放電時にはバッテリー内で高熱が発生するため、使用する素材に対してはさらに追加の要件が設けられています。この用途に使用される素材は、エレクトロニクスに対する厳しい要件を満たす高度の寸法安定性、優れた耐薬品性および耐熱性、難燃性、そしてセル内で発生する熱をモジュールのアクティブもしくはパッシブヒートシンクに確実に伝導する高度な熱伝導性を備えている必要があります。
また、バッテリーセルハウジングの製造に使用する素材にも安全上の配慮が必要です。従来これらのトレイは一般的なプラスチックで作られていますが、熱伝導性のプラスチックで作ることにより、バッテリーモジュールの総合的な熱管理を大幅に向上できる可能性があります。これによって、高度の熱負荷を金属製のバスバーまたは追加の水冷システムのいずれかに拡散を促し、バッテリーの効率と耐用期間を向上させることができます。
DSMでは、それらのLiBのすべての用途向けに特別に設計された素材をご用意しています。世界最大のSNの生産者の1つとして、私たちの素材は最高レベルの純度を誇り、より安全で効率のよいLiBを実現します。私たちのXytronPPS素材は、角柱状のシールに使用され、接着剤を必要とせずに、金属への優れた直接接合を実現しています。また、この素材は、その高度の寸法安定性、クラス最高の耐薬品性と耐熱性、本質的な難燃性、高度の熱伝導性によって、バッテリーセルハウジングとバッテリートレイにも最適です。さらにこの素材は、加工性にも優れ、射出成形時にバリを発生せず、成形後の再加工が不要です。
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03 December 2018