水素がもつ質量あたりのエネルギーは、全燃料の中で最高です。1kgの水素は33.3 kWhに相当し、従来の燃料に比べて3倍のエネルギーを供給します。しかし水素の周囲温度が低いと、単位体積あたりのエネルギーが低くなります。そのため、エネルギー密度を高める可能性をもつ先進的貯蔵方法の開発が必要です。
私はDSMで、材料の専門知識を駆使し、安全かつ効果的で非常に軽量な水素タンクの開発に取り組んできました。水素タンクは、静止電源、ポータブル電源、そして輸送を含むアプリケーションで水素と燃料電池技術を推進するための重要な技術であり、燃料貯蔵の次段階となるものです。圧縮天然ガス(CNG)タンク用にこの技術を開発済みであっため、自動車業界のニーズを満たす水素タンク用に同じ材料とデザイン原理をテストすることは、当社にとっては自然なことでした。
2つの部分からなるこのタンク設計は、ポリアミド6ベースのエンジニアリング・プラスチック、Akulonフューエル・ロック製の実績のあるブロー成形ライナーを使用し、炭化水素に対する非常に高度なバリアを備えています。このタンクは単方向(UD)連続ファイバーで補強したEcoPaXXポリアミド410製の熱可塑性プラスチックテープを巻くことでさらに補強できる可能性があります。市販材料のこの組み合わせは、CNGタンクにおいて非常に効果的であることが既に立証されており、現在DSMでは水素タンクのコンセプトを積極的にテストしています。
その結果として、水素貯蔵アプリケーション用の軽量プラスチックタンクを提供できる可能性があります。車両が10kg軽くなるごとに、1kmあたり約1gの二酸化炭素排出量削減につながることから、軽量化は重要です。ライナーについては、Akulonフューエル・ロックによって金属に比べ重量を大幅に削減できます。また、ポリオレフィンライナーと比較して透過性が向上しているため、気体がタンクにとどまります。このライナー材料は、100%リサイクル可能で、座屈現象の発生もなく安全です。
さらに、この材料は極度の低温(-40℃)でも延性と靭性を維持するように最適化されています。これはCNGにとっても重要でしたが、水素貯蔵では使用圧力がはるかに高いため一層重要です。
18 September 2018