加齢に伴う免疫機能の低下は、免疫老化とも呼ばれ、高齢者の感染症に対する脆弱性の増加や予防接種に対する反応性の低下によって証明されています1、2、3。新型コロナウイルスによって高齢者の免疫機能に注目が集まりましたが、これはパンデミックが発生する以前より問題視されていました。例えば、季節性インフルエンザは、全世界で毎年300万から500万人の重症者を出し、29万から65万人が死亡すると推定されており、高齢者は重症化するリスクが高いと言われています4。
免疫系のバランスが崩れ、加齢とともに炎症が増加する「免疫老化」の結果、年を重ねるごとに栄養が重要になってきます5。最適な免疫状態のための栄養の重要性は広く認識されており、既存の観察研究では、特定の栄養素が高齢者の免疫をサポートすることも示されています6。年を重ねるにつれ栄養摂取の重要性が高まる一方で、加齢に伴う様々な身体的、生理的、認知的変化により免疫機能のサポートに必要な必須栄養素の摂取量を達成することは難しくなっていきます7。栄養素の吸収能力の低下、食欲不振、エネルギー需要の減少、生活習慣病リスク等の要因により、十分な栄養摂取を行うことが困難になります。
そこで、栄養状態を改善し、免疫系をサポートするために、医療用栄養、栄養強化食品、サプリメントが重要な役割を果たします。
免疫反応の低下を含む、加齢による変化に対処するためにビタミンC、D、E、セレン、亜鉛、オメガ3系脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの栄養素を最適な状態で摂取することが不可欠であることが実証されています8。免疫機能の最適化にはすべての必須栄養素の十分な摂取が重要ですが、微量栄養素を十分摂取した場合どんなメリットがあるのでしょうか。
最近開催された専門家によるパネルディスカッションでは、老化する免疫系をサポートする栄養に関する最新の研究と、高齢者の必須栄養素の適切な摂取のために取るべき方策について議論されました。『Advances in Nutrition』に掲載されたこの論文では、Calderらによる既存の論文と並んで、ビタミンC、D、E、セレン、亜鉛、そしてDHAとEPAを組み合わせた栄養素が免疫にもたらす効果について、さまざまな文献から得られた結果を総合的に検討しています1。
DSMのSenior Scientific Affairs ManagerであるBarbara Troeschは、今回の発表の意義を「高齢者の免疫をサポートするために、必須栄養素の最適な摂取が重要であることを強調する重要な論文です」と説明しています。また、「栄養業界に対して、高齢者が必要な栄養素を確実に摂取できる方法の探求を促すものでもあります。」と述べています。
微量栄養素の十分な摂取は、すべての個人、特に高齢者のような新型コロナウイルス感染のリスクが高いグループに推奨されています2。これに沿って、Calderらは、一般集団における免疫系の良好な機能をサポートするために、少なくとも200mg/日のビタミンC、2000IU/日のビタミンD、8~11mg/日の亜鉛、250mg/日のDHA + EPAと組み合わせたマルチビタミンおよびマルチミネラルサプリメントを推奨しています3。
Advances in Nutrition誌には、高齢者や免疫をサポートする栄養素を組み合わせることの利点に関するより具体的なデータが掲載されています。また、免疫機能に関する知見が確立していない栄養素についても、1日の推奨摂取量(RDA)を摂取するようアドバイスしています。
高齢者の免疫機能をサポートする栄養素は、新型コロナウイルスの流行以降も引き続き注目されるでしょう。高齢者が食事だけで十分な栄養状態に達することが困難な状況においては、強化食品を含む栄養製品が検討されるべきです。
DSMは、世界中の高齢者の健康寿命の延伸と最適な栄養状態をサポートすることに情熱を注いでいます。
私たちは医療用栄養のイノベーションに寄与し、高齢者の栄養におけるニーズに対応したソリューションの開発をサポートします。