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世界と乖離する日本のポリアミド価格の決定方式

2019年 4月 5日
  • Nobu Kang(姜 信良)コマーシャル・ディレクター、日本

ポリアミドの価格は、製造コストを反映して取引されるのが世界では一般的であるが、日本ではその価格決定方式について、独特な商慣習が残っている。それは、基礎原料であるナフサの価格にポリアミドの価格も連動させるというものである。もともとナフサ価格はポリオレフィンの価格決定に使われていた。ポリオレフィンの価格決定根拠としては合理性があったのだが、1990年代初頭からポリアミドにも流用され、今では国内の取引で広く用いられている。この方式が今、素材メーカーを悩ませている。

例えば、PA6の原料となるカプロラクタムは、ナフサから抽出されるベンゼンを出発原料とし、化学反応を繰り返して製造される。本来、基礎原料のナフサとそこから派生して得られるカプロラクタムの価格は連動するはずだが、いまは両者の価格に乖離が生じている。つまり、ナフサの価格は下がっている一方で、カプロラクタムの価格は高止まりしているのである。

ナフサの価格下落は、エチレンが、ナフサからでなく割安なエタンガスを元に作られるようになったことによる影響が大きい。エタンガスとの競合によって、ナフサの価格が下落した。一方で、カプロラクタムは、最大の供給国である中国で工場に対する排出ガスや排水規制が強化されていることで、生産が大きく減少。このためナフサの価格は下がっても、カプロラクタムは価格が上昇するという現象が生じた。

 この場合、PA6の価格は基礎原料のナフサでなく、直接原料のカプロラクタムに連動して決められるのが合理的だが、日本ではナフサに連動した値決めが慣習として生きている。このため、素材メーカーだけが上昇した製造コストを負担していることになる。

 この慣習による悪影響として今後考えられるのが、日本の自動車産業における樹脂化が遅れる可能性だ。CO2排出規制の厳格化やEV化の進展により、欧米自動車メーカーによる部品の樹脂化は今後一層進む見通しだ。一方で日本においては、市場原理と一致しない値決め方式によって、素材メーカーと自動車メーカーとの取引が細る可能性も考えられる。日本を代表する産業の国際的な競争力維持のためにも、市場原理に基づく値決め方式の導入が待たれている。

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