DSMエンジニアリングプラスチックス

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スマートフォンのトレンド:次世代のスマートフォン・ケース

2018年 7月 30日
  • Dr Tamim Peter Sidiki(タミム・ピーター・シディキ博士)DSMエンジニアリングプラスチックス、グローバル・マーケティング・ディレクター(エレクトロニクス)

2007年にAppleが最初のiPhoneを発売し、全く新しい市場が生まれました。スマートフォンはそれ以来目覚ましい成長を遂げましたが、現在では市場は成熟し、コモディティ化しています。一方、オリジナル・エクイップメント製造者(Original Equipment Manufacturers、OEM)の情勢は大きく変化しました。ノキア、モトローラ、RIMなどの有名ブランドが姿を消した一方、中国で強力な市場地位を持つVivoやOPPOなどのブランドがスマートフォンメーカーとして世界のトップ5にランクインするようになりました。これらのブランドはまだ多くの国では知られていませんが、SamsungとAppleに次いで第3位の市場シェアをHuaweiと争っています。しかし、パフォーマンス、機能、デザインはすべてメーカー間で似通っています。

スマートフォンがコモディティ化する中、OEMは新しいウェアラブルとコネクテッドホーム市場の獲得を重視しています。スマートフォン技術の大きな変化が予想されており、OEMは熾烈な競争環境において差別化を図ることが可能になります。2018年を通してモバイル業界では、性能の向上と柔軟なディスプレイなどの新しいハードウェア技術の導入が進み、またスマートフォンをより緊密なコンパニオンにするための人工知能などのソフトウェアが飛躍的に進歩しました。金属製ケースの良し悪し-長年にわたりAppleは、主にソニー株式会社(日本)とその1980年代後半のWalkmanから得たハイエンド機器のコンセプトであるアルミニウム・ボディのスマートフォンデザインを好んできました。iPhoneの人気に伴い、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、またはマグネシウムによる金属製ケースがトレンドになりました。

これらの材料は、優れた機械的性能と美的価値、感触を兼ね備えています。ミッドエンド~ハイエンドモデルのほとんどで、金属製ケースがプラスチック製のハウジングに取って代わりました。金属に固有の熱伝導率は、これまで以上に強力なプロセッサーからの熱を拡散するのに役立つ一方、その電気伝導率は無線周波数(RF)の減衰を引き起こし、したがって無線信号の送受信が弱まります。金属製ケースの電磁干渉(EMI)シールドの問題を克服する1つの方法は、ケースをアースし、それをアンテナの延長部にすることです。最新のスマートフォンには、セルラー(GSM、EDGE、3G、4G、LTE)、GPS、WiFi、Bluetoothという複数のアンテナが備えられています。スマートフォンには、機器を持つ手の吸収に関わらず良好な電波を保証するために2つのセルラー・アンテナが備えられています。主アンテナは電話機の上部にあり、二次セルラー・アンテナは下部にあります。電話機はより良い電波に応じて、これら2つのセルラー・アンテナ間で切り替えを行います。

ガラスへの移行:次世代のスマートフォン・ケース

オールガラスのスマートフォン・ハウジングは、少なくとも美しさの観点からは工業デザイナーの念願であるといえます。しかし、日常的な使用時の信頼性を確保するために不可欠な、落下や転倒などの製品テストに合格するのに必要なメカニカル・インテグリティは持たないと考えられます。このことと継続的なThInnovationのトレンドの結果として、完全にフレキシブルなディスプレイが実装されていない限り、オールグラス・デザインのハイエンドモデルには引き続き金属製フレームが使用されると予想されます。これらの金属製フレームは、プリント回路基板(PCB)、EMIシールド、金属コーティングなどスマートフォン・ハウジング内の部品に関連するRF減衰への対策となるアンテナ増幅器として機能し、引き続きスマートフォンのデザインをサポートします。

フレームに使用される金属の選択は、メカニカル・インテグリティ、重量、耐久性、および達成可能な仕上げ加工および効果に影響します。アルミニウムはその低密度、リサイクル性、そして原材料と製造にかかるコストが低いことから魅力的な選択肢ではありますが、アルミニウム合金では長期使用によって金属フレームに腐食が発生します。ステンレススチール合金は、マット~高光沢、研磨~ブラッシュドの仕上げや、細かいヘアライン仕上げなど、アルミニウム合金に比べて幅広い仕上げの選択が可能です。その表面は、真空金属蒸着(VM)、物理蒸着(PVD)、または電着(ED)で処理することができます。一部の消費者はニッケルに敏感であり、廃棄物処理についても環境上の制約があることから、PVDはニッケルメッキの代替手段とみなすこともできます。

その高密度による重量の増加が懸念されますが、機械的特性がより高いことで肉厚を減らせ、機器の重量増加は恐らく無視できる程度になります。重量の懸念がある場合には、チタンの使用も検討できます。ステンレススチール合金SUS 304は最も一般的に使用されています。金属をポリマーに接合するナノ・モールディング・テクノロジー(NMT)に対する新たな需要は、金属とポリマーを直接的に接合するもので、陽極酸化またはPVDなどの装飾加工の前に行われる重要な二次加工です。NMTは、特別な質感を持たせた金属表面をポリマーでオーバーモールドして強力な接合を実現します。接合強度は、金属表面、加工条件、または化合物の特性による影響を受けることがあります。適切な表面テクスチャーを達成するためには基材によって異なる処理が必要になりますが、表面テクスチャーの重要な特徴は、最適なポリマーの浸入および結合を可能にするマイクロ/ナノ機能を含むマルチスケールの粗さです。以下にNMT加工の概要と適切にテクスチャ加工された基材の表面の例を示します。空隙のトラップを回避し、ストレスや悪条件下でのはく離を防ぐ強力な接合を達成することが重要です。アルミニウムを覆うステンレススチールの選択については、NMT用のポリマーを選択する上でさらなる課題を提起します。

アルミニウムは一般的に、柔らかいアルミニウム表面を擦りキズや腐食から保護し、デザインに応じて色を追加するために陽極酸化されています。陽極酸化はNMTの後に行われるため、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PBT/ポリエチレンテレフタレート(PET)ブレンド、またはポリスルホン(PSU)など、陽極酸化加工に耐えられるポリマーを使用する必要があります。陽極酸化はアルミニウムには理想的である一方、ステンレススチールやチタンなど、機械的強度が高い他の金属には適していません。これらの代替合金は、次世代スマートフォンの構造的完全性を提供するための主な候補ですが、PVDなどの高温加工手法に耐えることができるNMT用のポリマーが必要です。PVD加工は150℃〜180℃の温度で3時間かかるため、NMTに一般的に使用されているポリマーは適切ではありません。PPSはUV耐性および着色性が低いことから、美しさに関する高度な要件を満足する必要のある外装部品向けには理想的な材料ではありません。したがってOEMは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの高温プラスチック、およびPEEKと競合する性能を示す、新しく専用化された高ガラス転移温度(Tg)・熱たわみ温度(HDT)PPAから選択する必要があります。

NMT加工は、以下のステップを用いて説明することができます。

  1. 基材を洗浄した後、金属表面にマイクロ及びナノスケールの空隙を生成します。アルミニウムの場合、湿式の多段階化学エッチング加工を使用します。
  2. 金属を適切にエッチングし洗浄した後、プラスチックコンパウンドでオーバーロードします。表面テクスチャーのポリマーファイリングによって金属とポリマーが強力に接合されます。
  3. オーバーモールドの後、部品の金属層にPVDなどの装飾加工を行う場合もあります。

NMT用の新しい高温材料-DSMは高性能ForTii®AceポリマーをベースにNMTに適した新しい材料を開発しました。ForTii®Aceは、すべてのポリフタラミド(PPA)の中で最高のTgを有しています。その独自性は、他のPPAに比べ優れた結晶化挙動を可能にするC4分子の化学にあります。またその高いTg(芳香成分による)は、温度および耐薬品性をPEEKと同等にし、剛性については高い加工温度でPEEKを上回ります。ForTii®Aceの高ポリマー/分子強度により機械的強度はすべてのPPAの中でも最高となっています。

この材料によって、チタンとステンレススチールで可能な非常に高いNMT接合力を達成することができます。これは高ポリマー強度および優れた加工性によるものです。マイクロ/ナノ細孔の十分な充填を可能にするNMTを介した良好な接合には、フローと結晶化の制御が不可欠です。金属表面構造が十分に充填されると、結晶化によって優れた接合強度およびコンパウンドの高い剛性と強度を確保できます。DSMはチタンとステンレススチールへの接合用に、ForTii®NMX33 およびForTii®Ace NMX5というNMT専用の2つのグレードを開発しました。ForTii®Aceポリマーは、寸法安定性、耐熱性、明るい色に関する耐UV性、または誘電性が重要な役割を果たすアプリケーションに最適な材料です。両グレードとも既に市販されており、デザイナーは最高の美しさと材料性能が求められる次世代オールガラス・ケーシングやその他のクリエイティブな金属とプラスチックの接合を実現できるようになります。NMTは金属をプラスチックに接合するためのエレガントな技術であり、工業、航空宇宙、自動車セクターなど、様々なアプリケーションや業界で使用されています。

当社の完全なNMTポートフォリオには、PBTおよびPPSコンパウンドが含まれています。この幅広いポートフォリオにより、メーカー各社は、1つの連絡窓口を介して様々なデザインや業界向けの材料とアプリケーションに関するサポートを受けることができます。ForTii®NMX33およびForTii®Ace NMX5は、ステンレススチールとチタンの両方に対する接合強度において最高の性能を示しています。これらのコンパウンドの溶融温度はそれぞれ320℃および340℃で最高の耐熱性を示しており、、PVD加工時に到達する極度の温度に完全に適合します。

スマートフォンのイノベーションで次の飛躍を実現

スマートフォンがアプリケーションとして成熟するにつれて、デザインや機能の革新に向けたプレッシャーが急速に高まっています。小規模なスタートアップ企業とグローバルな多国籍企業の両方が、利益率の高い数十億規模の市場において差別化を可能にする新しいデザインコンセプトに全力で取り組んでいます。

スマートフォンの傾向は明らかに、アルミニウム製のハウジングから、ステンレススチールやチタンなどのより高い機械的強度を有する材料で作られた金属フレームを備えるガラスまたはセラミック・ボディへの移行です。これらのデザインは、DSMが2017年に発売した次世代コンセプトに見られるポートフォリオに含まれるような、高性能エンジニアリング・プラスチックをベースとする実績のあるプラスチックと金属の接合手法を使用するものです。標準的なNMT技術はPBT、PBT/PET、PPSポリマーで広く使用されていますが、DSMのForTii®Aceコンパウンドは、これまでPEEKでしか達成できなかったレベルに性能を引き上げます。これらの新しい材料は、化学的、機械的、耐熱性の点でPEEKに匹敵し、非常に良好な寸法安定性と、機械的強度がより高い金属への優れた接合強度を提供します。ForTii®Aceによって、デザイナーが現在の材料の能力を超え、スマートフォンのイノベーションにおいて大きく飛躍することを可能にします。

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