医学的栄養におけるEPAおよびDHAの複数の有用性について、専門家委員会による最新の研究結果発表

作成者：Talking Nutrition（トーキングニュートリション）編集部

臨床現場におけるEPAとDHAの有用性を探る新たな研究成果

世界人口の高齢化と非感染性疾患（NCD）の蔓延に伴い、ますます複雑化する患者のニーズに対応し、成果を改善し、医療費削減に役立つ適切な栄養介入と対象を絞った医療栄養ソリューションへの需要が高まっています。
Nutrients ジャーナルに掲載された最新の専門家論文では、エイコサペンタエン酸（EPA）とドコサヘキサエン酸（DHA）オメガ3脂肪酸に関する最新の科学研究、およびこれらの成分が患者や高齢者の生活の質および臨床転帰にいかに貢献する可能性があるかが検討されています。
専門家委員会では、特定の治療分野や患者層におけるEPAおよびDHAの有用性について調査し、これがより的を絞った、食べやすい医学的栄養ソリューションの開発にどのように役立つかを議論しました。

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EPAおよびDHAがどのようにして患者や高齢者をサポートするか

世界的に平均寿命が延び、加齢や生活習慣に起因する非感染性疾患（NCD）の有病率が高まり、複雑な医療ニーズを抱える患者や高齢者の数が増加しています。これらの患者や高齢者には、健康的な免疫機能をサポートし、医学的合併症を減らし、患者の回復や自立を促進する最適な栄養学のケアが欠かせません。しかし、疾病関連の栄養失調、つまり疾病や疾病の治療に起因するエネルギー、プロテイン、そして微量栄養素の摂取不足により起こる状態は、多くの臨床症状で共通して見られ、予後不良につながる可能性があります。そのため、体が弱っている患者の栄養不足に対処し、可能な限り最良の臨床結果を得るために、経口栄養剤や経腸栄養剤などの医療栄養製品が必要とされる場合があります。

新たに発表された論文では、エイコサペンタエン酸（EPA）およびドコサヘキサエン酸（DHA）の摂取と患者の健康を関連づける科学的根拠が蓄積され、これらの成分が高齢者や患者をどのようにサポートするかが検討されています1。実行可能な研究により、専門家委員会は、 EPAとDHAを含む経口栄養補助食品、または経腸・非経口処方の提供は、様々な治療領域で多くの患者集団をサポートするのに役立つと結論づけました。

ここでは、この論文で発表された重要な結論と科学的知見を紹介します。

EPAとDHA、いくつかの治療領域で有望な効果を示す

非感染性疾患の患者は通常、慢性炎症を患っています。そのため、炎症の解消をサポートし、体内で適切に調節されるようにすることは、疾病と向き合う上で適切であると考えられています。長鎖オメガ3脂肪酸であるEPAとDHAは、人間の健康や正常な免疫機能に関与することが知られており、その主要な作用の1つに、炎症を抑えて解消を促進することがあります。^1,2,3 この幅広い作用が、多くのさまざまな治療領域において医療合併症を減らし、患者の栄養ニーズをサポートすることが研究で示されています。4,5,6,7 今回の発表で、専門家委員会は、認知機能、加齢に伴う筋肉量の低下、がん、外科手術患者、重症患者など、多くの患者集団および病状においてEPAおよびDHA栄養の役割を特定しました。8,9,10 その結果、長鎖オメガ3脂肪酸を十分に供給することは、これらの病状を呈する患者の栄養管理における重要な要素と見なされるべきであるとされました。

研究のまとめ：EPAとDHAの主な応用分野とは？

認知機能の低下: 人々の寿命が延びるにつれ、認知機能の低下は公衆衛生上の懸念事項となっており、認知症を患う人の数は2030年までに7500万人に達すると予想されています。12 専門家委員会は、EPAとDHAの摂取が脳の健康を支え、特に認知症の初期段階において認知機能の低下を遅らせるのに役立つことを示す証拠が増えていると論じています。ある研究では、オメガ3 LCPUFAの補給は、認知症でない高齢者の記憶に対して小さな効果を示したが、別の報告では、実行機能に対して効果があることが確認されました13,14 。別の分析では、アルツハイマー病を含む加齢依存性慢性疾患の重要な遺伝的危険因子であるApoE ε4遺伝子型を持つ個人において、認知機能低下の進行に対してオメガ3LCPUFA補給が早い段階で有益な効果を示すことがわかりました。15 しかし、専門家委員会は、EPAおよびDHAの介入は、軽度の段階を超えて進行した認知症を経験する個人に対して有益な効果をもたらす可能性は低いと結論付けています^{。16,17,18,19,20} このことは、EPAとDHAがアルツハイマー病の初期段階を呈している患者において最も有益であり、軽度認知機能低下者を栄養介入の最も有望なターゲットグループとすることを決定した最近のメタアナリシスによって、裏付けられています。²¹
サルコペニア：高齢になると合併症が増え、エネルギーや必須栄養素を十分に摂取することが難しくなります。つまり、サルコペニア（進行性の筋肉減少）、栄養失調、虚弱といった状態は、高齢者によく見られ、重複していることも多く、生活の質や自立によくない影響を与えるおそれがあります。^22,23 加齢に伴う慢性低悪性度炎症は、サルコペニアの重要な一因である可能性があります。^24,25 そのため、EPAとDHAの抗炎症作用は、加齢に伴う筋肉の減少（サルコペニア）を遅らせるのに有効であると考えられます。²⁶ さらに、オメガ3脂肪酸は、筋タンパク質合成を調節し、筋力と機能を促進する可能性があります。²⁷したがって、高齢者が栄養管理に運動と組み合わせてEPAおよびDHAを長期的に補給することは、高齢者の身体的障害を遅らせ、生活の質と自立性を向上させる安全で手頃な方法を探している医学界にとって、ますます興味深いものとなっています。
がん性悪液質： がん性悪液質は、体重減少、食欲不振、体力の低下を特徴とする消耗症候群で、がん患者の約50～80％が罹患し、臨床予後、治療効果、死亡率に悪影響を及ぼします。^{8,29,30,31,32,33} この症状の正確なメカニズムはよく分かっていませんが、ほとんどの患者では慢性的な全身性の炎症が重要な主な症状となっているようです³⁴ 。炎症を緩和する能力があることから、がん患者へのDHAとEPAの介入がますます注目されてきています。重要なことは、既存のエビデンスから、EPAとDHAはがん患者において安全であり、忍容性が高いということです。^35,36 さらに、高タンパク質と組み合わせたオメガ3系LCPUFAの補給は、がん患者のQOLに有益な効果をもたらすかもしれないという示唆もあります。³⁷ しかし、がん患者におけるEPAとDHAの使用に関する現在の推奨は弱く、特にがん患者におけるEPAとDHAの有益性を調査する、より科学的な研究が必要であることを示しています。³⁸
手術患者： 栄養失調は手術合併症の重大な危険因子であり、入院期間の延長、感染に対する脆弱性の増加、死亡率の上昇につながります。手術後の合併症を予防するために、ERASと呼ばれる術後回復の強化のコンセプトでは、周術期の栄養療法を患者の全体的な管理に組み込むことを提唱しています。³⁹ 手術により体内でストレスと炎症が増加するため、周術期の免疫栄養療法にDHAとEPAを追加して、過剰な炎症を緩和し患者の回復を支援することが有益であると考えられます。

このことは、革新的な医療栄養ソリューションにおけるEPAとDHAの役割においてどのような意味を持つのでしょうか。

ここでは希望の持てる結果をご紹介しましたが、現在利用できる研究は限られており、サプリメントの摂取量、タイミング、期間、ベースラインの栄養状態、臨床状態、薬の使用などのばらつきがあるため、一貫性がありません。例えば、がん性悪液質の治療には複合的な介入が最も有望であることが認識されつつありますが、臨床エビデンスの多くは単一の治療法のみを用いた試験から得られています。同様に、DHAおよびEPAが周術期の免疫栄養に役割を果たすことは明らかですが、よりよくデザインされた試験を行うことで、その使用に関する明確なエビデンスが得られ、最適なタイミングと期間が確認されると考えられます。これは、特定の患者群におけるEPAおよびDHAの効果をさらに明確にし、より個別化された効果的な医療用栄養製品の開発を促す、より良い対照介入研究の必要性を強調しています。さらに、医療栄養業界では、より食べやすく魅力的な医療栄養製品を製作するため、最新の患者の嗜好を教育するための継続的な患者インサイトが重要です。

Published on

13 September 2021

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