エキスパートに聞く:ビタミンDと免疫の健康について知っておくべきこと

作成者:Talking Nutrition(トーキングニュートリション)編集部

  • ビタミンDは骨と筋肉の健康を支える役割でよく知られていますが、世界が新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)へ立ち向かうための新たな方法を模索する中で、ビタミンDの免疫系とRSウイルスへの体の反応をサポートする働きについての関心が高まっています。
  • ただし、世界中の人々が免疫機能を最大限向上させるのに必要な血中ビタミンDを十分に得られないという課題があり、イノベーションのエキスパートは、これを良い機会として消費者の健康をサポートする栄養ソリューション開発に取り組んでいます。
  • この「エキスパートに聞く」インタビューでは、ビタミンDがどのようにして免疫力の向上をサポートしているのか、なぜ「太陽のビタミン」が脚光を浴びているのか、そして食品やサプリメント製造者が世界的に低いビタミンD量の改善にどう貢献していけるのかについてみていきます。 

免疫系サポートにおけるビタミンDの役割とは?

免疫系は私たちの「常にオンになっている」防御機能で、感染から身を守るために継続的に監視を行っています。病原体に遭遇すると、免疫系が自然免疫と獲得(後天性)免疫という二刀流のアプローチで体を守ります。

Bruins医学博士によると、自然免疫とは人類が生まれ持った免疫のことで、病原体の侵入から体を守る物理的なバリアと、感染の脅威を真っ先に検知し取り除く細胞防御の最前線で構成されます。私たちは生きていく中で、2つ目の防衛機能を獲得します。これが獲得免疫系です。

 
 

DSMの主任栄養科学者であるMaaike Bruins医学博士が人生を通した免疫系の最善化におけるビタミンCの役割と、世界の十分なビタミンD摂取量確保の課題解決に、イノベーションがどのように寄与できるかについて論じています。

後天性、つまり獲得免疫反応は自然免疫に比べて時間がかかり(数日から数週間)ますが、獲得免疫は病原体排除により特化し、記憶を持っています。獲得免疫は、Tリンパ球とBリンパ球という特殊な白血球で構成されています。これらが連携して感染した宿主細胞を特定し、抗体を産生することで破壊します。抗体は血流に乗って侵入者と結合し、侵入者にフラグを立てて免疫細胞に破壊させます。極めて重要なのは、新たに獲得した感染症から学習した獲得免疫系が「記憶細胞」を生成し、同じ病原体が体内に再感染した場合に迅速な適応反応を可能にすることです。 

 

ビタミンDは、自然免疫と獲得免疫の両方の機能に不可欠な役割を果たしています。研究によると、ビタミンDは感染症や病原体に対する反応に関与しており1,2,3 抗菌ペプチドの産生をサポートしたり、免疫反応の過剰な活性化を抑制して有害な影響を防いだりできます。4 また、ビタミンDは急性呼吸器感染症の発症を抑制することが、ヒトの研究により明らかにされています。5

太陽光が持つビタミンへの注目

新型コロナウイルスのパンデミックにより、感染予防や免疫反応サポートにおけるビタミンDの役割が科学者、政府、消費者の注目を集めることになりました。パンデミック以前に行われた研究では、ビタミンDの補給が急性呼吸器感染症のリスク軽減に寄与することが示されています。ビタミンDレベルの低下と新型コロナウイルス感染の関連性を示す証拠が次々出てきたことで、広く関心を集めるようになりました。Bruins医学博士は、ビタミンDの状態と新型コロナウイルスの関連性に関する新たな証拠となる2つの研究に、特に言及しています。 

最初の研究は、ヨーロッパ20か国で行われ、ビタミンDレベルとCOVID-19の症例および死亡との相関を評価し、ビタミンDの状態が低いと個人の感染の可能性が高まることを明らかにしたものです。6 Bruins博士が引用した、約20万人の米国患者におけるビタミンDの状態とSARS-Cov-2検査陽性との関連を調べた2番目の研究7 についての詳細は、ビタミンDが免疫に与える影響の解明を専門とするAdrian Gombart博士による科学ブログで紹介する予定です。 

最適な摂取量を確保するために

季節の変化やライフスタイルの変化により、太陽光を浴びることが少なくなり、また十分なビタミン源となる食品も多くないことから、世界中の人々がビタミンD不足に悩まされている現状は当然のことと言えるでしょう。実際、世界中の88%もの人々がビタミンD不足の状態であると評価されています。8

しかし、Bruins医学博士はビタミンD状態を改善し、世界中の人々の免疫力を最適化するために、さまざまな栄養ソリューションがあると説明します。牛乳やパンなどの主食を強化し、ビタミンDのサプリメントを毎日摂取することで、不足している太陽のビタミン、つまりビタミンDレベルを確実に回復させることができます。 

また、世界中の人々のビタミンDの状態を改善するには、継続的な調査と傾向の観察が不可欠です。食品メーカーやサプリメントメーカーが、ニーズや課題、トレンドを把握することで、革新的で魅力的なソリューションを生み出すことができます。そのためには、原材料の提供だけでは不十分です。つまり、パートナーが必要なのです。エンドツーエンドのパートナーとして、DSMは人間に重きを置いたアプローチをとり、製品開発のすべての段階に、好奇心、インサイト、イノベーションのすべてを注ぎ込みます。DSMの科学に裏付けされた製品、カスタマイズソリューション、専門家によるサービスなどの幅広いラインナップは一味違います 

免疫の健康に関する消費者の課題解決を目的としたパートナー提携やイノベーションの詳細に関してはぜひお問い合わせください。

 

Published on

20 November 2021

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参考文献

  1. Gombart. The vitamin D–antimicrobial peptide pathway and its role in protection against infection. Future Microbiol., vol. 4, no. 9, pg. 1151, 2009.
  2. Greiller and Martineau. Modulation of the immune response to respiratory viruses by vitamin D. Nutrients, vol. 7, no. 6, pg. 4240-4270, 2015.
  3. Steinstraesser et al. Inhibition of early steps in the lentiviral replication cycle by cathelicidin host defense peptides. Retrovirology, vol. 2, no. 2, 2005. 
  4. Grant et al. Evidence that Vitamin D Supplementation Could Reduce Risk of Influenza and COVID-19 Infections and Deaths. Nutrients, vol. 12, no. 4, pg. 988, 2020. 
  5. Martineau AR, Jolliffe DA, Greenberg L, Aloia JF, Bergman P, Dubnov-Raz G, Esposito S, Ganmaa D, Ginde AA, Goodall EC, Grant CC, Janssens W, Jensen ME, Kerley CP, Laaksi I, Manaseki-Holland S, Mauger D, Murdoch DR, Neale R, Rees JR, Simpson S, Stelmach I, Trilok Kumar G, Urashima M, Camargo CA, Griffiths CJ, Hooper RL. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory infections: individual participant data meta-analysis. Health Technol Assess. 2019 Jan;23(2):1-44. doi: 10.3310/hta23020. PMID: 30675873; PMCID: PMC6369419.
  6. Ilie, P.C.; Stefanescu, S.; Smith, L. The role of vitamin D in the prevention of coronavirus disease 2019 infection and mortality. Aging Clin Exp Res 2020, 32, 1195-1198.. 
  7. Kaufman. SARS-CoV-2 positivity rates associated with circulating 25-hydroxyvitamin D levels. PLosOne, 2020.
  8. Hilger et al. A systematic review of vitamin D status in populations worldwide. Br J Nutr., vol. 111, no. 1, pg. 23-45, 2014.

 

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