JP, 06 4 2017 07:00 CEST
ライフサイエンスとマテリアルサイエンスのグローバル企業であるDSMは、3月9日(木)イイノホール&カンファレンスセンターにて、第1回DSM環境経営フォーラムを開催しました。
DSM環境経営フォーラムは、世界が循環型社会の実現に向けて動き出している中、環境経営の議論促進に貢献することを目的としています。また、フォーラムをきっかけに日本の企業と協力し、持続可能性に貢献するイノベーションを創出することを目指します。第1回となる今回は、企業の関心が高い「パリ協定」をテーマに、化学業界を中心に企業がどのようなビジネスチャンスを見出し、どのように競争力に転換しうるのか、そして、マテリアルサイエンス・ライフサイエンスの分野におけるイノベーションの経済効果について議論を展開しました。
DSM社会長、フェイケ・シーベスマは残念ながら出席できませんでしたが、ビデオメッセージで、ご挨拶させていただきました。
■フォーラムの概要
ディー・エス・エム ジャパン株式会社代表取締役社長中原雄司の挨拶からスタートした講演では、名古屋大学大学院の高村ゆかり教授に環境に関わる国際的な動向やパリ協定の内容について解説していただき、また、環境省、経済産業省より、二酸化炭素排出量の削減に向けて、企業が進めるべき取り組みや方向性についてご指導をいただきました。
DSMからは経営会議ボードメンバーDimitri de Vreeze(ディミトリ・ドゥ・フリーズ)とコーポレートサステナビリティ担当バイスプレジデントJeff Turner(ジェフ・ターナー)が登壇し、「世界で最も持続可能性の高い企業100社(Global 100)」*の9位にランクインした経験をもとに講演を行っています。
欧州化学工業連盟(CEFIC)理事でもあるDimitri de Vreezeは、気候変動への危機感と日本の低炭素化の重要性を述べた上で、国連の「持続可能な開発目標(SDG)」達成による経済価値が12兆ドルに上るという試算を紹介しながら、パリ協定が日本の企業、特に、化学企業にとって大きなビジネスチャンスであることを強調しました。また、環境経営の事例としてDSMの取り組みを紹介。製品ライフサイクルを通して人や地球への負荷が少ない製品を『Brighter Living Solutions』と定義づけ、その拡充を目標として掲げていることが、社内外で理解者、協力者を獲得してイノベーションを加速させ、競争力強化や機会獲得に繋がっていることなどを説明しました。
また、Jeff Turnerからは、DSMの持続可能性に関する戦略や重点領域、具体的な製品や数値目標などを紹介しました。その中で、温室効果ガスの1つであるメタンの約25%を占める牛のゲップを大幅に低減する酵素「クリーンカウ」や、ゴミの量世界第2位のカーペットを100%リサイクル可能にした「Niaga」を例に挙げ、ほぼ全ての製品が事業活動を通して持続可能性に貢献していることを説明。さらに、こうした製品の開発を加速させるために社内カーボンプライシングを設定していることを挙げ、その運用方法や社内外でどのような効果が発揮されているかについ解説しました。
講演に続いて行われたパネルディスカッションは、国連環境計画金融イニシアチブ 末吉竹二郎特別顧問をモデレーターに迎え、株式会社三菱ケミカルホールディングス 政策・渉外室顧問 松田潔氏、日本化学工業協会 専務理事 渡辺宏氏、エコノミスト・コーポレート・ネットワーク 東南アジアディレクター Andrew Staples(アンドリュー・スティープルズ)氏、DSMのDimitri de Vreezeがパネリストとして参加しています。化学の技術が様々な産業における環境優良化を支えてきたこと、そして、ゼロエミッションに向けてより大きな期待がかけられていることを背景に、化学業界の果たすべき役割や、そのための課題、それを解決するための方法やポイントなどについて議論しました。
フォーラムの最後には、後援の駐日オランダ王国大使館よりAart JACOBI(アルト・ヤコビ)大使にご挨拶をいただき、日本の企業に向けたメッセージを頂戴して締めくくられました。
なお、各プログラムの詳細については、後日、採録集を公開する予定です。
* カナダ「コーポレート・ナイツ」誌が、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会にて発表
<参考資料>
DSMはこれまでWorld Economic Forum、COPサイドイベントなどに参加し、循環型社会について議論を深めてきました。また、環境経営も積極的に導入しており、その経験からグローバル市場において、環境経営が競争力を生み出すことを体験しています。
日本化学工業協会への加盟は2016年ですが、これまで、cLCA*の推進をはじめ様々な環境への取り組みを行ってこられた日本の化学業界の皆様に敬意を表するとともに、DSMの経験を共有し、共に化学産業の発展を目指していきたいという思いから、この度の「第1回DSM環境経営フォーラム」の開催を決定しました。
また、「パリ協定」では、世界の温室効果ガス排出量を今世紀後半にゼロにし、産業革命以来の気温上昇を2℃未満にするとの目標が示されています。実施に向けたルール作りは2018年に決定することになっていますが、現状を踏まえると、国、自治体、企業を問わず、大きなチャレンジになることは間違いないと予想されます。
このルール作りについて、日本政府も積極的に関与する方針を打ち出しています。新しいルールへの対応、対策もさることながら、CO2排出量削減について積極的に推し進めてきた化学業界が、今こそ、この議論の中心となり、日本政府を後押ししていくべきだと考え、第1回のテーマを「パリ協定」にしています。
*cLCA (carbon Life Cycle Analysis ):カーボンライフサイクル分析
温室効果ガス排出量のみに限定し、化学製品を使用した完成品と比較製品がそれぞれに原料採取から廃棄までのライフサイクルトータルで排出するGHGの差の分を排出削減量として算出する手法。
DSM – Bright Science. Brighter Living.™
DSM社は、科学をベースとして健康、栄養、材料分野で活躍しているグローバル企業です。ライフサイエンスとマテリアルサイエンスにおける独自の技術を組み合わせることで、経済的繁栄、環境問題への取り組み、そして社会の発展を促進し、DSMと関わる全ての人々にとって持続可能な価値を創造します。また、DSMは食品や栄養補助食品、パーソナルケア、飼料、医療機器、自動車、塗料、電気・電子機器、ライフプロテクション、代替エネルギー、バイオベース素材などのグローバル市場において、顧客企業の業績向上・維持に貢献できる革新的なソリューションを提供します。年間の純売上高はおよそ100億ユーロ、社員数は25,000名で、Euronext Amsterdamに上場しています。
詳細については www.dsm.com をご覧ください。