Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)2018での発表

Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)2018での発表

2018年10月11日に開催されたInnovation for Cool Earth Forum 2018で、DSMアドバンスト・ソーラー、バイスプレジデントのパスカル・デ・サン(Pascal de Sain)が発表をいたしました。

目的と成果が手を握る

DSMはかつて、炭鉱事業を行う会社でした。その後、この会社は大きく変化を遂げ、私がDSMに入社した当時、会社の事業構成の50%は石油化学関連でした。今では、石油化学関連はゼロです。現在DSMは、栄養、健康、持続可能な暮らしの分野に携わる科学をベースとした会社となっています。

このように当社は事業ポートフォリオを大きく転換させてきました。そしてこのほど、企業戦略を一新しました。これにより最も大きな変化がこれからやって来ると思っています。その変化とは、単に持続可能性の面で強固な基盤を持っている会社から、利益優先か社会にとって望ましいことをするかのどちらを重視するかという従来の二者択一を超えて、優れた財務リターンを挙げてそれを維持しながらも、全面的に目的主導型の会社になるという変化です。

初めに、当社がさらに変化を遂げようとする強い「理由」について説明します。人類として、我々は、潜在的な気候災害、いまある資源量の四倍を超すほど過度の資源利用の要求、数億人もの人々の飢えや肥満などが組み合わさった問題に直面しています。

こうした大規模で複雑な問題に対して、目に見える特効薬のような解決策はありません。だとしたら、私たちのような中規模の多国籍企業がこれらの問題に取り組める方法とはどのようなものでしょうか?

当社は、真っ先に、私たちが勝負する場を定義しました。持続可能な開発目標(SDGs)が「世界の課題」であると捉えて、持続可能な開発目標を当社が取り組む分野として反映させました。当社は栄養と健康、気候とエネルギー、資源と循環という3つの領域で、SDGsのうちの5つの目標に特に取り組むように努力しています。当社の事業と大きなイノベーションは、すべてこれらの領域に収まっています。現在のところ、当社の製品は、「ブライター・リビング・ソリューション」と呼ばれる枠組みのもと、世界中で25億人の人々に何らかの形で届けられています。当社は、あらゆる人々のためにより豊かな暮らしを創造することを目的としています。「ブライター・リビング・ソリューション」は、私たちのビジネスがこの目的にかなっているか、その有効性を評価する手法として作られました。このソリューションに基づく事業は現在、当社の事業構成の65%を占めており、我々はこの比率をもっと上げることを目指しています。

自社が活躍できる場を理解したら、次に、何をすべきでしょうか?

まず第一に、当社の事業運営の影響力を高めます。これは欧米企業が最先端を歩むべき分野であり、我々からそれを始めるべきだと確信しています。当社では、2030年までに自社の温室効果ガスの排出量を30%削減する目標を設定しました。さらに、2025年までに自社の購入エネルギーの50%を再生エネルギーの利用とし、2030年までにこれを75%に引き上げる目標を設定しました。

第二に、当社のお客様がより持続可能なソリューションを提供できるようにしたいと努力しています。代表的な例は、当社の水性塗料に関する先駆的な取り組み「Waterborne China Platform (WBCP)」です。これは、業界の幅広い連合を形成する精緻な入れ物のような組織で、業界が道筋を定めるにあたって常に政府の措置や規制に頼らなくてもよいようにと作ったプラットフォームです。

第三に、業界全体の関連するトピックスについて、強い立場で取り組んでいけるようにすることが重要と考えています。当社がアドボカシー活動を行う形態は様々です。当社は、法律の制定、財政制度や政策を改革する仕組みとして、また投資判断の優れた基準として、カーボンプライシングを先頭に立って促進しています。世界銀行によれば、化石燃料に年間5,000億ドルの直接的な価格助成金が使われ、主として途上国に向けられています。この金額は2017年の太陽光発電設備の市場価格全額の3倍を超えています。

最後に、会社の方向性を新たな分野へのイノベーションによって変えて行きます。ビジネスの事例をいくつか紹介します:

毎年、何十億キログラムものカーペットがごみとして埋め立てられています。ラテックス接着剤をはじめとする多くの材料が組み合わされて使用されているため、この40年間、それらの材料を再利用可能なものにすることは技術的に困難であるのみならず、経済的にも引き合わないものとされてきました。DSMは、Niaga®Technologyを開発しました。この技術によって、エネルギー消費量を90%削減できる、100%再生利用可能なカーペットが生まれました。

もう一つの例は、当社のソーラー事業です。当社は、反射防止コ―ティング、汚れ防止コ―ティングを施した、100%再生可能でカーボンフットプリントを30% 低減する耐久性に優れたバックシートにより、二酸化炭素の排出を2,300キロトン節減しています。

DSMが率先して自社の業績改善に努め、お客様をはじめ様々なステークホルダーと関わり合い、どのようにして目的主導型で、成果重視型の会社になりつつあるかをお分かりいただけたと思います。とはいえ、当社だけで成し遂げることはできません。当社のバリューチェーン全体において、諸政府、諸規制機関、金融界のリーダーシップを、特に、欧米において歓迎いたします。というのも、時代は、気候変動を食い止めるためにより多くのリーダーを必要としているからです。